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♪ダバダバダ…で有名な映画「男と女」(1966)を見てみた 車レースと音楽(ボサノヴァ)の歴史から見た「男と女」

今日、昼を食べながらテレビを見てると、NHKのプレミアム・シネマで古い1966年の映画である「男と女」を放送していた。

(因みに昼飯は、キャンベルののスープと塩パン、生ハム、サラダ、フルーツ。後知恵で、なんか映画に合ってたかな?w ”牛丼”とかは多分似合わない映画w)

この映画で自分が知っている事と言えば、フランシス・レイ作曲のあまりに有名な映画音楽だけ。

この音楽の「ダバダバダ...」と言うフレーズだけは多くの人が知ってると思う。そして、この音楽から想像するのは、甘さの中にある何とも言えない哀愁。

 

映画「男と女」について
カーレースの歴史から見る「男と女」

それで、すぐに仕事に戻りたいのも他所に自分はこの映画を見入ってしまったけど...

その見入ってしまった最初の理由は、主人公の男がレーサーと言う設定で、当時のルマン24時間の名車であったフォードGTをドライブする場面とかかなり出て来て、「おおー」とか思ってしまったからだったw (下記動画参照)

(自分は、大の車好きでレース観戦が趣味の一つだったりする)

そして、終いにはこの映画にはルマン24時間の場面も出て来て、「男と女」はフランス映画だし、ルマン24時間はフランスのルマン地方のサルテ・サーキットで行われるレース。66年と言う古い時代であっても、フランス国内ではルマン24時間は普通にテレビ中継されていた事をこの映画で知る事になった。

映画の中には、ジム・クラークとかアスカリの名前も登場して(二人ともF1の伝説的なチャンピオン)、アスカリが事故死した事にまで触れる一場面があった。実は、この「男と女」が公開された2年後、ジム・クラークもレースで帰らぬ人となっている。

その後は、歴史あるラリー・デ・モンテカルロにフォード・ムスタングで男の主人公が挑戦する場面も出て来る。

(当時はこんな車でラリーしてたんだ...とか、参加車種を見てるだけでも面白かった)

当時のF1や自動車レースと言うのは正に”死と隣合わせ”で、先述の通り、ジム・クラークやアスカリをはじめ、実際、多くのドライバーがレースで命を落としているし、それを知りながらもその危険を承知でスピードに命を駆けるドライバーは、儚いが故の独特の魅力を放っていた...と何度も聞いた事がある。

だから、彼らには「いつ死ぬかわからない」と言う感覚がいつも付きまとっていて、それが彼らを生活においても無謀にさせる事があったり、「生きてる間に楽しまなきゃ損」とばかり、豪華な生活を求めたり、女性遍歴も派手になりがちであった...と聞いている。

(今の時代は、レースの安全性は相当に向上したとも言えるけど、それでも、完全にカーレースから事故を取り除くは出来ない...)

そういう男に恋する女性にも、いつ愛する男を失うかわからない...と言う不安が付きまとったに違いない。

映画のネタバレになってしまうけど、実際、「男と女」の中の回想録シーンでも、男の主人公がルマン24時間のレース事故で意識不明の重体となり、その当時の男の奥さんがそれに動揺したまま乱心して自殺してしまう...。視聴者はラジオのニュースと言う形でその事実を知る事になる。

女性の主人公も、映画関係の仕事をしていて自立した人ではあるんだけど、レーサーと同じ位危険な職業とも言えるスタントマンの夫を亡くした過去を持っている。

そういう設定の中での「男と女」。

複雑な過去があるからこそ、なかなか新しい恋に踏み出せないもどかしさがよく描かれていたように思うけど、最後の方になると、「女は複雑」、「男は単純」みたいな対比も見え隠れしたりする。

映画だけ見ていると、この女性が新しい恋に踏み出せず、それに完全に身を委ねる事が出来ない理由を「前のスタントマンの夫が忘れられないから」とだけ括りたくなるかもしれない。

しかし、男の主人公が「レーサー」である事を意識して見てみると、またも危険な仕事をする男に恋をして、それをいつ失うかわからない恐怖...それも、女が新しい恋に踏み出せない理由にも見えて来る。
 

美しいカットシーン ファッションもオシャレ

多分、自分がNHKで見た映画もリマスター版なのかな...それほど古い映画を感じさせなかったし、これは監督の力なんだろうけど、まるで写真集を見ているような美しいカットシーンが印象的だった。

それに、アマゾンで売ってるDVDとかの表紙を見ると、随分艶っぽい映画にも見えるかもしれないけど、それに期待して買ったりすると、大損する可能性もありwww

今のアメリカ映画とかのラブ・シーンで免疫ができてる人から見たら、全然物足りないくらいで、その場面は、むしろ「違う男に抱かれながら、昔の夫の思い出に苛まされる」と言う心の葛藤を描く場面であって、期待しすぎてはいけませんw (映画とすれば、なぜ女性が新しい恋に飛び込めないのかを意味する重要な場面ではあるんだけど)

そして、個人的に非常に印象に残ったのは、セリフの少なさ。

さりげない会話の場面も結構あるけど、しかし、人には”口には出せない心にしまった思い”と言うものがあって、実はそれがこの映画では重要な要素にも思えたりした。それをこの映画で表現するのは、その場面に流れるボサノヴァ風の曲やその歌詞だったりする。

「表向きの言葉」と「口に出せない言葉」と...セリフと音楽で使い分けていた事が印象的だった。

数日後、これまた映画音楽があまりにも有名な「シェルブールの雨傘」(これもフランス映画)を同じNHKのプレミアム・シネマでやるみたいだけど、この映画もセリフは全然無くて、ミュージカル仕立てで、セリフが全部歌になっている。(こちらの音楽は、やはりフランス音楽の巨匠のミシェル・ルグラン)

「シェルブールの雨傘」は64年にカンヌ映画祭でグランプリを受賞した作品で、しかし、アメリカのMGMの陽気すぎるミュージカル映画と比較すると、そのストーリーの物悲しさにフランス映画をかなり意識する事になる。(この映画は視聴済み)

「男と女」はこれとも違って、主人公が歌ったりはしないけど、当時のフランス映画には、色々な試みを感じる事も多い。
 

また、特に女性のファッションとか髪型とか、66年の映画でありながら、今、そのまま現代にこの女性が来ても何の違和感が無いだろうな...とさえ思えた。

よくファッションの世界は、何十年か毎に流行が一回りする...と聞いた事があるけど、女性主人公を演じるアヌーク・エーメが美しすぎて(顔もスタイルも)、それだけでも自分は幸せになれる映画だったw

特に彼女が着るムートンのコートがカッコよくて、66年と言う今から50年以上昔に既にフランスにはこういうオシャレなファッションと生活があった事も驚きだった。

さすがファッションの都、フランスと言う感じで...

 

ラテン音楽(ボサ)とフランス映画

「男と女」は、自分の好きなジャンルである「レース」映像や音楽がふんだんに使われている事から、自分の気持ちを惹きやすい映画であった事は認める。

そして、フランシス・レイの音楽...映画音楽の巨匠の一人だけども、「ある愛の詩」、「白い恋人たち」、「パリのめぐり逢い」、「雨の訪問者」...等々、彼の映画音楽は非常に有名なものが多い。

それで、「男と女」は、「ダバダバダ...」のあまりに有名な主題歌の他、ボサノヴァ風の曲がかなり使われている。

実は、映画のシーンで使われたボサを書いたのは(サントラの半分位の楽曲)、この「男と女」で女性主人公の亡くなった夫(回想シーンで登場)を演じていたピエール・バルー。彼の正体は、俳優でありながらミュージシャンでもあった。

フランス人でありながら、ブラジルを旅してボサを学び、フランスにボサを広めた張本人でもあって、フレンチ・ボサと言うジャンルは、彼によって作られた...とさえ言われている。

多分、自分が長らく持っていた「ボサを聴くと、なぜかフランスのオシャレなカフェテラスや町並みを思い出す」と言う感覚は、正にここに原点があったのかもしれない。

どこでフランス映画とボサの接点を学んだのかは自分でも記憶は無いんだけど、「男と女」の映画を初めて見た...とか言いながら、どこかで細切れに見ていた可能性もあるし、当時のフランス映画は、こういう楽曲を用いた映画は多かったのかもしれない。(自分が生まれる以前の話だから、こうとしか書けないんだけどw)
 

そう言えば、ボサノヴァと言えば、本場ブラジルにアントニオ・カルロス・ジョビン(トム・ジョビン)と言う超巨匠が居る。自分がジョビンの曲に出会ったのは15歳の時だったけど、ジョビンの曲を最初に聞いた時も、なぜかフランス映画ばかりがイメージとして浮かんで来たりした。

ジョビンと言えば「wave(波)」と言う位、知らない人が居ないほどの名曲だけども、67年に出されたこのアルバムは未だ売れ続けていて、現代においてもすごい魅力を発揮し続けている作品。(数年前のアマゾンのワールド・ミュージックのジャンルで年間1位さえ獲得している)

「男と女」を映画を見た人ならわかってくれると思うけど、このジョビンのアルバムと「男と女」の音楽と世界観には共通性を感じると思う。

...と言う事は、ピエール・バルーは、まだ誕生して間もなかったであろうボサノヴァを正しく現地で学んで来た...と言う事になるように思う。

ブラジルの巨匠ジョビンの方は、「男と女」のさらに以前、「黒いオルフェ」と言う59年の映画非常な有名な楽曲を提供している。

この映画はギリシャ神話を題材にした悲恋(オルペウスとエウリュディケー)をベースにしているけど、この映画も「男と女」と同じくアカデミー賞の外国映画賞を獲得していて、ブラジルが舞台となっているとは言え、「ブランス、ブラジル、イタリア」の合作。

やっぱりフランスが入っているのか...と言う感じで、50年代の終わりにして既にフランス映画にブラジルのボサの影響があった事を知る事になった。

そう考えて行くと、ボサは映画音楽に使われたりして、誕生して間もない期間で瞬く間に世界に広がって行ったように思うし、(Wikipediaを見ても、ボサの誕生は1950年代)、この当時のボサノヴァと言う新しい音楽のジャンルは、映画にも新しい風をもたらす事になったに違いない。
 

超余談 自分にとってのボサノヴァ

自分にとって、ブラジルの巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンと言う人は間違いなく音楽の神様の一人で...しかし、本当の事を言うと、自分がボサノヴァと言うジャンルを最初に意識したのは、デイブ・グルーシンのアルバムだった。これが13歳の時。

デイブ・グルーシンは、ジャズ・ピアニストやコンポーザー、プロデューサーとしても有名だけど、自分はこの人の影響で音楽の世界に没入したと言っても過言ではないほど。

映画音楽も沢山担当していて、有名な映画だと「卒業」、「天国から来たチャンピオン」とか「チャンプ」(これはメチャクチャ泣ける映画。見たのを後悔したほど泣けて仕方なかったけど、科学者の調査がそれを裏付けしてる言う話があるほどw その内、時間があったらこの映画についても書きたくなった)

そして、それを経由して、ジョビンと言うボサノヴァの本家本元に出会うまで2年掛かる事になったけど、ジョビンの録音は相当に古い音源ではあるんだけど、この時の衝撃たるや本当にすごいものだった。

(なんだ、このピアノ、なんだ、このコードみたいなねwww)

ボサノヴァやラテンの曲がジャズ界に影響を与えた事は言うまでも無い事だけど、その他にも、クインシー・ジョーンズとかE.W.&F.のモーリス・ホワイトやら、ソウルの世界のミュージシャンにまで影響を与えて来た。

この曲は、ジャズ・ピアニストのラムゼイ・ルイスとE.W&Fが一緒にやってる74年の楽曲で、モーリス・ホワイトは元々はラムゼイのバンドのドラマーだった。
 

また、クインシー・ジョーンズは色々な所でラテン・テイストな曲をやってるけども、自身のリーダーアルバムである81年の「愛のコリーダ」のVelasは忘れられない楽曲。

これは、現代のブラジル音楽の巨匠と言うべくイヴァン・リンスの曲で、クインシーは、この頃、好んでイヴァン・リンスの曲を取り上げる事が多かった。

ちょうど2年前、この曲で哀愁あるハーモニカと口笛を披露しているトゥーツ・シールマン(ジャズ界の超巨匠)が亡くなったと言う事もあって、その死を悼む記事を簡単に書いたけど、そこにも自分はこう書いていた。

ハーモニカのトゥーツ・シールマンスの訃報を今頃知って

トゥーツはベルギーの人でアメリカのジャズシーンでも活躍してた人だけど、なぜかこの人の音には、パリが思い浮かんでしまう。いや、個人的にはパリしか浮かばないw ボサを演奏しててもね。

(略) この”velas”は、今でも自分のとって神曲の一つで、自分の価値観の中では、これほど哀愁があって美しい曲はあるのか・・・と、いつ聞いても溜息が出るほどの破壊力を持ってるように思う。

2年前であっても、自分の感覚の中では、ブラジル音楽はフランスに通じている...と言う感じで、今日のこの記事は終わりたいと思う。

公開日 カテゴリー Moovie, Musicタグ

About Makoto

TESシリーズ(Skyrim、ESO等)のファンサイトを運営。しかし、本性は音楽geek(soul,Funk& Jazz他)、中学2年の頃からプログレ・バンドで鍵盤系をやってました。Wordpressは2007年からの古参。 Home:  Rolling Sweet Roll

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