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グリゴリー・ソコロフの驚くべくピアノ 

先日、家で夕飯を食べていると、いつの如くパートナーが録画を溜めている音楽番組が流れていた。(いつも夕飯の時に流してくれる)
しかし、最初の一音を聞いた時、誰これ...?とか、間違いなく時間が止まった。

「誰この人?」
「ロシアのグリゴリー・ソコロフって人。すごい人なんだって」

パートナーの説明はいつもこんなものだけど、ソコロフ...名前は知ってるけどなかなか聞く機会に恵まれなかったピアニストで、若干16歳でチャイコフスキーコンクールを審査員の満場一致のゴールドで優勝を勝ち取った天才。非常にリサイタルを大事にするピアニストだとも聞いた。

映像だと随分年行ってる人に見えたけど、タッチは間違いなく全盛時代。実際、まだ67歳だそうです(ルービンシュタインが好きな自分からすれば、67歳の現役はまだまだ若い筈w)

NHKの記録によれば、自分が見たソコロフのリサイタルは以下のような内容。

◇グリゴーリ・ソコロフ
ピアノ・リサイタル(1:53:00~4:15:00)
<曲 目>
・パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825 バッハ 作曲
・ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 作品10第3 ベートーベン 作曲
・ピアノ・ソナタ イ短調 D.784 シューベルト 作曲
・楽興の時 D.780 シューベルト 作曲
・マズルカ イ短調 作品68第2 ショパン 作曲
・マズルカ 嬰ハ短調 作品30第4 ショパン 作曲
・マズルカ 嬰ハ短調 作品63第3 ショパン 作曲
・マズルカ 嬰ハ短調 作品50第3 ショパン 作曲
・前奏曲 変ニ長調「雨だれ」 ショパン 作曲
・前奏曲集 第2巻から「カノープ」 ドビュッシー 作曲

<出 演>
ピアノ:グリゴーリ・ソコロフ

収録:2015年8月18日 プロバンス大劇場(フランス)

2020/3/1 追記 お借りしていた動画が見れなくなってしまったんで、別の動画をお借りしてきました。

この動画の演目はシューベルトの「楽興の時」とアンコールが含めれていない以外は同じように思うし(自分の見た録画は2時間以上のボリューム満点のリサイタル)、多分、会場の映像からこれと同じものと思う。バッハの響きが違うように思うんだけど、自分も今違う環境で聞いてるんで(今はPC用のステレオ、先日は居間のもっと良い音響で)その違いはかなり大きそうだけど。

それで、ソコロフのピアノには久々に良い意味で鳥肌がたったと言うか、自分はクラシック界の人では無いけど、色々なピアニストのCDやアルバムを持っているし、しかし、特に最初のバッハと二番目のベートベン。これほど美しいピアノの音があるのか?と思うほど、NHKの放送の録画を見ながら、自分の中では完全に止まっていた。とにかく上手いも何もピアノの音が全然違う。まるで曇り一つ無い傷一つ無いような透明の氷なようなピュアで澄んだ音。そして驚くほど正確。

パートナーも自分がこれほど感動して聞き入ってる姿を珍しく思ったのか、一緒になって食事の時間も忘れて聞き入ってるし...w

正直なところ、ショパンの演目は、バッハやベートーベンの演目から比べるとピアノの音の作り方のせいかもしれないけど、個人的にはあまり好きではない感じだったけど(単に好き嫌いの問題で、それだってメチャクチャ上手いです)、バッハとベートーベンに関しては忘れがたいほどの衝撃を受けた。グールドとかグルダのアルバムも持っているけど、また全然違う奥深さと言うか...

しかし、このソコロフの評価を見てみると、現存のピアニストでナンバー1にあげている人も多数見掛けるし、自分もそれには納得...。
 

2020 3/1 追記: Spotifyのソコロフのアルバムを幾つか置いておきます。


 

話が少々逸れるけど、チャイコフスキー・コンクールと言うと、自分にとっては忘れる事が出来ないピアニストが一人居る。ソコロフとはタイプが違うピアニストだけど、ジョン・オグドンと言うアシュケナージとその優勝を分け合ったイギリス人のピアニスト。

リアルタイムでは全然知らないけど、この人の...まして、オグドンのピアノからかなり遠いように思えるショパンを聞きながら、子供時代を過ごしていた。

自分の所有のCDだけど、これは同じ録音をCDで買い直したもの

自分がピアノを始めたのは5歳の時だったけど、それも殆どオグドンの影響で、別れの曲が好きで(生意気なガキw)、親に自分からピアノを習いたい...と言い出したのがきっかけだった。

自分の実家には、ピアノのアルバムの10枚組みたいなのとカラヤンの10枚組のセットがあって(その他にも幾つかセットがあったように思う)、親はバカのように子供の情操教育にはクラシックが良いと信じ込んでいるタイプで、自分が赤ん坊の時からそれらの音楽をずっと流していたそう。もしそうなら、自分が音楽から離れられなくなったのは、間違いなく親のせいに思う...

その中の一枚がオグドンのショパンで、しかし、オグドンと言うピアニストがどういう人だったのか、それを認識出来るようになったのは間違いなく小学生の後半になってからだった。チャイコフスキー・コンクールをアシュケナージと分け合った後、超絶技巧のピアニストとして活躍するも、精神病を病んだりして、最後は肺炎を起こして52歳と言う若さで亡くなっていた。

これを知った時、子供ながらすごい複雑な思いに駆られて、それでもオグドンの珍しいとも言えるショパンを聞いて育った奴がここに居て、その音がどれだけ自分の子供時代を彩ってくれたのか、その思い出が彼の供養にも思えていたり...。

このCDはさすがにショパンのように気楽には聞けなかったけど、持ってるだけで幸せだった

ソコロフの録画を見ながら、我が家では当然のようにオグドンの話が出て来たけど、パートナーの言葉がとても面白かった。

「ジョン・オグドンって、ルードヴィヒ2世に似てない? 若い頃痩せてて、年いってから精神病を病んですごい太ったりして...」

ものすごく不謹慎な発言にも聞こえるけど、言われてみればそんな感じもする。パートナーは先日、WOWOWでヴィスコンティが監督したルードヴィヒ2世の映画を見ていた事も自分は知っている。

話が全然違う所に行っちゃったけど、そういうわけで、ソコロフのピアノを聞きながら、全然違うタイプのピアニストだとは言え、自分の音楽の心の中に大事にしまわれているオグドンの事を思い出したりもした。

クラシックについては専ら聞く側になってしまうけど、個人的にはどんな音楽もクラシックには敵わない...というクラシック至上主義の一面が自分にはあったり(人生を音楽に捧げて奏でられる音)、今回も素晴しい音楽に出会えて本当に幸せだった。

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